2014年1月4日土曜日
福岡市南区美容室デルタクレムフォーヘアー☆この気持ち忘れず本年も邁進して行きたいと思います☆
「おばちゃんのおまじない」 このお話はある美容師が体験した実
話です。
デルタクレムもこの気持ち忘れず本年も邁進して行きたいと思い
ます。どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m
それまで知らなかった。
自分の仕事で人の命を 永らえる事が出来るなんて。
今から10年前。 私の父は生きて退院する 人の方が少ない病棟
にいた。
病名はガン。
そのフロアには、他の病棟では もう見られないほどの 末期の患
者さんがたくさんいた。
男性、女性とも同じフロアで、 ただ先生の言葉にしたがい 希望の
ない明日におびえて生きていた。
今まで病気一つした事のない父は、 その中で異質な程明るかっ
た。
自然と言葉を交わす人達が増え、 見舞いに行く私にも 気さくに
話かけてくれるようになった。
ある日父が言った。 「頭がかゆい」 そのフロアの中央にナースセ
ンターと 並んでサロンにあるようなサイドシャン用の シャンプー
台があった。
そのフロアの住人達は皆、 首から上の大手術をした患者ばか
り。
私の父も、線路のような長く大きい 生々しい傷があった。
「他に出来ることないかなぁ…」 先生に尋ねてみることにした。 予
想に反して「OK」がでた・・・ 出てしまった・・・。 実を言うと傷にシ
ャンプーをつけるのが・・・ 傷を触るのが・・・ ちょっと恐ろしかっ
た。
腹をくくった。
いつも通りに仕事をしてると思えばいい。
ただ痛いといけないから水圧も 洗い方もちょっと弱めに。
指が傷に触れた。
ちょっと動揺した。
「心配するなー。気持ちいぞー。」 父が言った。
アシスタントの時ですらかかなかった 何ともいえない汗を Tシャ
ツがビショビショに なるほどかいていた。
ふと気づくと、娘にいつもお菓子を くれるおばちゃんが立ってい
た。
「やだー。あんた美容師さんだったのー!!」 こんな所にいなきゃ
病人だとは 絶対に思えない、そのおばちゃんが 大きな声で笑っ
て言った。
次の週。
見舞いに行くと シャンプーの予約が6件も入っていた。 女の人ば
かりだった。
彼女たちは手術のために頭を半分、 丸坊主にされているという
何とも言えないスタイルだったが、 やはり女性。
「きれいにしていたい」 と言った。
シャンプーをしている間、 彼女達は実によくしゃべった。
色々な事を話してくれた。
あっけらかんと笑いながら、 分の残された時間までも。
週が重なるごとに 週1回では間に合わない位、 シャンプーの予
約が入り、 私は売れっ子の様だった。
それから1ヶ月。
大きな声のそのおばちゃんは死んだ。
前日仕事場に父から電話があり 「おばちゃんがどうしても 頭やっ
てくれってきかない」 と言われ、仕方なく 道具をもって病院に行っ
た。 確かに図々しいおばちゃんだが、 無理難題を言う人じゃなか
った。
不思議に思いながら いつも通りシャンプーをした。
傷にはもう慣れていた。 だから手が雑だったんだろう。
おばちゃんは私に何度も 洗い直しをさせた。
「おいおい私はシャンプーギャル じゃないんだからさぁ・・・」 心の
中では思っていた。
すると、おばちゃんが言った。
シャンプーしてもらってるとさぁ・・・ やってくれてる人の心の中の
声って 聞こえちゃんだよねー。 今、カンベンしてよって 思ってん
でしょう。 聞こえちゃったもんねー。 まあさぁ、私にとっちゃこれが
人生最後の美容院なんだから、 あきらめて頑張って洗いなぁ!
ガッハッハ」
息が詰まった。
同時に正直 「このやろう!やってやろうじゃん!」 とも思った。
余計なことはいっさい考えなかった。 初めてその人のためにだ
けに無心でシャンプーした。
シャンプーが上がったおばちゃんは、 こうも言った。
「私さぁ、本当ならもうとっくに 寿命きれてんのよねー。 先生に言
われたわぁー。 『岡田さんの娘さんに 頭やってもらってたから、
寿命伸びたんじゃないの』ってねー。 最後に本当に心のこもった
シャンプーをしてもらったし、 寿命まで伸ばしてもらって、 本当に
感謝してるわぁー。ガッハッハ」
何にも言えなかった。
自分がした事が良い事だなんて、 わからなかった。
ただ、おばちゃんのおかげで、 今まで自分は何と雑に仕事を し
てきたのだろうと、ガクゼンとした。
洗いすぎて指先がフヨフヨになっていた。
おばちゃんはその手を見て、 「まだまだ綺麗な手。 そんな手、職
人の手じゃないよー。 もっと荒れてごわごわになって、 そうしたら
一人前だー。 見たかったけど残念だー。 でも、あんたは強い。
一生懸命、生きなさいよ。 人間、3分後に死んじゃうかもしれな
い。 心残りないように、 仕事も家庭も手を抜くんじゃないよ。 約
束だからね。 破ったら化けて出るからね。ガッハッハ」
次の日の朝、おばちゃんは 口紅をつけて死んでいった。
息子さんに 「ありがとうございます。 あなたのおかげで母は少し
だけ 欲張って生きました。」 と言われた。
父が死にそうになっても 泣かなかった私だが、 病院中に響き渡
るほど大声で泣いた。
今、自分の手を見てみる。
今年で40才。 美容師はじめて21年。
まだまだ綺麗な手。
もっと荒れてゴワゴワにならないと。
心の声を聞かれても 困らないよう 「どうぞまた、この人と会えます
ように」 と願いながら仕事をしている自分がいる。
そんな自分が好きだ。
私は強い。
おばちゃんがかけてくれたおまじない。
もっと手が荒れて ゴワゴワになったら一人前。
見てて、おばちゃん。 私はもっと頑張れる。
「感動シャンプー」 ある美容師とガッハッハおばちゃんの涙の物
語
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